◆ Ⅰ - ⅹ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
“時じゃない何か”の話している内容なんて、もうどうでも良くなっていたオレは、軋む体に鞭打って、なんとか飛ばされた距離の四分の一を進みきった。
そうして分かった事だけど、どうやらオレは、学校と外とを分け隔てているフィンスにぶつかって、そのまま倒れていたらしい。こんな遠くに飛ばしやがって……と、まだ這ってでは遠い道のりへの憤りを心の中で思いながら進んでいたら、“時ではない何か”が意味ありげな言葉を吐いた。
『素敵な贈りもの』
なんて。
目の前にいるアイツが“素敵”だなんて単語を使った時点で、それは全く逆の意味になってる。だからオレは、這っている体を止めて顔だけを上げてソイツの方を見た。
そしたら、オレのその行動を待っていたかのように、ソイツはオレの視線をしっかりと受け止めた。続いて、すぐ傍に居る三人の方へと視線を流して、ソイツの目が鈍く、赤色になったと思ったら……
「――――…………っぁ!!」
声にならない声を上げて獄寺君、山本、お兄さんが倒れた。
動いた三人に対して、息が出来るようになったのか? と淡い期待を向けたけど、単純な考えをしてしまった自分を呪いたい。
苦しさに喉元を押さえて悶える三人。その手には力が入り過ぎているんだろう、爪が首を傷つけている。もう片方の手は地面に爪を立てて、僅かに見える表情はさっきよりも酷い苦痛の色で歪んでいた。
“アイツ”は“これ”をオレに見せたかったんだ。
「どうだい? 少しは燃えたかな?」
「な……にやってるんだよ……っ!」
「どれほどの苦しみか分かり易いだろう? 視覚からの情報は最も有効なものだ。危機感も増して、ゾクゾクしないかい?」
「そういう事言ってるんじゃないっ!!」
口から血の混じった唾液が飛んだ。
口の中も怪我をしていたらしい、と意識の端で感じた。
けどこんな痛み、三人に比べたらずっとましだ。
背中の痛みなんか三人の為なら痛くもなんともない……!
「…………ほぉ」
体に痛みが走る。
けど痛くない……痛くなんかない。
地面に這いつくばっていた体を引き上げる。足に血が伝っていくのが分かるけど、ああ、意外とオレも頑丈になった。そう思うだけで終わった。
「……三人は、オレが守る……っ!」
「死ぬ気ですらない君がか?」
「リ、リボーンがいなくたって……!」
それでも、やらなくちゃいけないじゃないか。
友達が死にそうなんだぞ。
友達が苦しんでるんだぞ。
ここで逃げていい訳がない。
ここで諦めていい訳がない。
「逃げるもんか……っ」
怖いけど、痛いけど、辛いけど。
けど――――
「――――ダメツナにだってな! 意地とかなんか他のモンだってあるんだよ! ここで逃げたら本当にダメなんだっ! 山本達は絶対にオレが守る! 絶対に逃げない! お前なんかにみんなを殺させるもんかっ!!」
オレの前、まだ少し距離のある所にいる、奴へと叫びながらに拳を体の前で構える。そうしたら、また血の混じった唾液が飛んで、今度は冷たい何かも頬を伝った。
怖さで流れた涙だった。
そして、それを見た目の前の人間が笑ったのと、その場にいない筈の人物の声が聞こえたのはほぼ同時で、次の瞬間にはオレの体に覚えのある衝撃が走って――――
「――――よく言ったぞツナ。それでこそファミリーのボスだ」
後ろへと倒れる瞬間にオレの目が捉えたのは、真っ暗なスーツと真っ黒な洒落た帽子、そして時と同じ、黒というには綺麗な、深い黒色の瞳を持つ小さな赤ん坊が空中でオレに微笑みを向けている様子。
何時もなら怖いその瞳が、その時だけは奇妙に安心できた――――
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