◆ Ⅰ - ⅸ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
一瞬だった。
オレの前にいた時が一瞬にしてオレの目の前から遠のいて、次の瞬間にはオレの体に物凄い衝撃と痛みが走っていた。そして、気付いた時には地べたにうつ伏せになっていて、痛みに悲鳴を上げる体の中で何とか動く顔を動かせば、正面、遠く見える“時ではない何か”と、助けなければいけない友達と先輩。
吹き飛ばされたのだ、と認識するのに時間はかからなかった。
「く……そ……っ!」
痛い。
痛いけど動かなくちゃいけない。
三人が危ない。
今尚オレにだけ視線を向けている“何か”から三人を守らなくちゃいけない。でも、オレの意思に反して体が動かない。痛く……軋む。
「……嫌だね全く。何時もそうなんだよ。“空の王”たる君達には何時も何時もワタシ……ああいや、オレの意識が届かない。実に気に入らない」
遠くからかすかに聞こえる、既に時の声ではなくなった“何か”はハスキーな女性の声で何やらを喋り始めた。それはどうやらオレに対する文句の様なもので、さっきまで笑っていた顔が今は不愉快に歪められている。
「な……に言ってん、だよ……っ」
「ん? ああ失礼。君が知る必要はまだないよ。しまったな喋りすぎた」
「…………っ?」
意味が分からない。
なのでオレは訳の分からない事から意識をすぐに切り替えて、考えるべき、この後の行動をどうすべきかを考えた。
とにかく、なんとしてでも三人を助けなくてはならない。遠くに飛ばされたから三人の表情は見えないけど、もう三人共、息なんて限界だろう。早くなんとかして助けなくちゃいけない。
たぶん、いいや、確実に、この異常事態の原因はあの“時の姿をした何か”だ。だったらアイツを何とかすれば、この状況は動くのだろう。だけど、どうにもこうにも体が動かない。しかも、さっきの衝撃が肺に届いたからか呼吸が上手く出来なくて息が乱れる。背中が軋むのは骨でも折れた所為だろうか。
(……助けなくちゃっ)
助けなくちゃいけない。
大事な友達。大切な人の、大切なお兄さん。
助けなくちゃいけないのに、体が思うように動いてくれない。
「おや? へぇ……ダメツナが頑張るじゃないか。……いや、しかし、クク、そうだな“それ”が“君”か、つまらないな。土下座でもすれば助けてやらない事もないのに……君の選択は、やはり“それ”なのか」
なんとか這って動いていたら、ずっとオレへ訳の分からない愚痴を呟いていた“何か”が、オレに気付いて語りかけてきた。一々ムカつく喋り方が気に入らない。
「……気に入らないか? ククク、結構だ。そういう無謀な心構えは嫌いじゃない。ああ、そうだ、素晴らしい心を見せてくれた空の王に素敵な贈りものをあげよう」
――――きっと、とても、面白くなるよ。
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