◆ Ⅰ - ⅶ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
「な、なんだこれ!? お、お兄さんしっかりして下さい! 山本! 獄寺君っ! なんだこれ!? なんなんだよこれっ!?」
息をしてない、なんてとんでもない状態に頭の中が一気に混乱する。
こんな状況で一体どういう行動を取れば良いのか分からないオレは、とにかく三人の呼吸を何とかしなくては、と思い咄嗟に三人の体を揺さぶってみた。
だからと言ってどうこうなる訳がないのだが、パニック状態の人間、しかもダメツナであるこのオレに、それ以上の事を期待されても困る事この上ない。
「ねぇ獄寺君! しっかりしてよ! 山本も……っ! 一体……」
一体どうしたんだ?
そう思う前に、オレは自分の行動でその疑問を解決する事になった。
三人の体を揺さぶる行動。
最初は気付かなかった。いきなり過ぎた出来事の為に、揺さ振った事で起こっている事が頭の中に入ってこなかったんだろう。気付いたのは二回目に山本とお兄さんの体を揺さぶっている時だった。
二人の肩に手を置いて名前を呼びながらに揺らす。勿論、二人の体もそれに応じて少なからず動きを見せるはずだった。けれど、動いているのは自分の意志で動いている、オレの両腕だけ。
息が止まっているだけじゃない
三人は体そのものが止まっていた。
「う……そだろっ、なんだよコレ……!?」
リボーンが来てからというもの、人生全てを使っても経験しそうにない異常事態を、呆れるほど経験してきた。自分が由緒あるマフィアの十代目候補だとか、銃で頭打ち抜かれたら死なずに生き返るとか、爆弾人間の転校生に右腕になると言われたり、野球部エースの人気者と決死のダイビングをしたり、手榴弾使う子供が現れたり。平穏な日本で普通にダメライフを送っていれば、絶対にあろう筈がない、色んな事を経験してきた。
してきたけど、これは、こんなの……っ!
三人の顔がどんどん青く、血の気が無くなっていく。表情は変わらないと言うのに、その瞳は本当に苦しそうに揺れて、何とか動こうとしているのだろう、唇だけじゃなく体まで小刻みに揺れ始めていた。
どうにかしたい、どうにかしなければならない。
けど、どう対処して良いのかが分からない。
誰かに助けを求めようと周囲を見渡すけど、さっきまで大量にいた野次馬の学生達は、もうみんな帰宅してしまったらしい。部活中の生徒の声もちらほら聞こえるけど、遠すぎて助けを求めるなんて事は出来やしない。だったら大声を、と思って叫んだけど、誰も気付いてくれず、オレの声がただ空中に響くだけだった。
誰かに助けてもらう道はなくなった。やっぱりオレが何とかしなくてはいけないらしい。けど、どうにもこうにもオレはダメツナだ。さっきの喧嘩すら、どうもできなかったと言うのに、こんな状況をどうにかできる訳がない。だけど、このままじゃ三人が死んでしまう。
「ど……どうしようっ。え、えっとっ。い、息が、息が出来る方法! 息が出来る方法、は……!」
心臓マッサ……人口呼吸か!
「いやこれは息止まった場合だ! だからえっとっ……うああもうっ!」
…………。
……あ。
「――――シャマルっ!!」
人工呼吸は息が止まった場合にする応急処置だ、と、そう自分に突っ込みを入れてすぐ、『応急処置』と言う単語に、我ながら良く思い出した、という考えを導き出した。
『息が出来ない場合の応急処置なら医者を呼べば何とかなるかも』
しかも“体が動かない”なんて普通じゃ考えられないようなオマケも付いているんだ。こんな異常な状態に対処できる医者なんて、医者にしてマフィアの関係者(その逆かもしれないけど)『トライデント・シャマル』なんて言う凄腕の殺し屋としての異名を持っている、あの人ぐらいしかいない。
普段飲んだくれている駄目人間だけど、異常医者として異常な状況を何とかできるだけの技量はあるだろう。
「ま、待ってて三何人共! オレ、すぐにシャマルを呼んで来るから!」
シャマルは普段、並盛中の保健室で先生なんて似合わない事をしてる。
辺りは大分暗くなっているけど、遠くから聞こえてくる声を聞くに、運動部員の声である事が分かる。だったら怪我をした時の為を考えて、流石のあの人だってまだいるだろうと思い――何より、声は女生徒のものだから、女好きのシャマルが帰る訳がない――すぐに身を返して、保健室まで駆け出した。
“駆け出そうとした”。
目の前の存在に、走ろうとした足が一瞬にして止まる。
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