◆ Ⅰ - ⅱ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
――――時がいなくなった。
あの日……時がお兄さんに殴られた、京子ちゃんが襲われたらしい、あの日。あの日の夜、時は何時の間にか、オレ達の前から姿を消した。
山本達と並盛を探し回ったけど、結局見つからないで、家に帰ってから覗いた時の部屋からは、時がこっちに来た時に持ってた、黒い肩掛け鞄。それから、時が始終持ち歩いていた音楽プレイヤーが無くなっていた。
別にオレ達は、時が京子ちゃんを襲ったなんて信じていない。もう疑う事は止めた。それに、時だって、やってない、ってちゃんとオレ達に話してくれた。
でも、京子ちゃんのお兄さん――笹川了平お兄さんは。
時は、仕方がない、って言ってた。大切な妹が苦しそうな顔で倒れていて、しかも傍には、強姦未遂事件の最有力の犯人候補がいたんだから、仕方のない事だって……って。
オレも、確かに仕方がないとは思う。
信じられないけど、京子ちゃんも意識を飛ばす前に見たのは、時だ、って言ってたし。そりゃその後、きっと見間違いだ、って、言ってくれたけど……けどやっぱ、その顔はもの凄く疲れてて、仕方がない、って言うのは、よく、分かる。
でも、だからって『そんな事』で済ませていい事じゃない……とオレは思うんだ。だって時は、やってないんだから。あんな風に殴られて、擦れ違ったままでいい筈がないんだ。
仕方ないで、片付けちゃいけない。
仕方ないで、蓋をしちゃいけない。
仲良くなりたい人と、そんなんで良い筈がない。
だからオレ、頑張ったんだ。時の誤解解こうと思って、お兄さんに会いに行って、オレ、少ない勇気振り絞って話したんだ。時みたいに明るく振舞って、頑張って笑顔作って、時がそんな事する訳ないですよ、って。
でもオレ……ダメツナだからさ。
聞く耳すら持って貰えなくって『それなら証拠を持って来い』で、一喝されて……もう本当……どうしたらいいんだろう、オレ――――
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