ⅩⅩⅩⅠ - 人皆旅人

◆ Ⅰ - ⅷ ◆ ⅩⅩⅩ ◆

「…………?」

 振り返った目の前には時が立っていた。

 オレの方に少しだけ顔を向けて、横に視線を流す様にオレの方を見ている。そしてその表情は、口角を少し上に向けて、さらりとした笑顔を貼り付けていた。


 ああ、しまった。


 そう思わずにはいられない状況だった。

 息が出来ない三人。
 微笑んでいる時。
 オレの前に立ちはだかるその人。

 さっき時に感じた違和感が、一気に押し寄せてきた時には、もう、現状は最悪だった。

「……何処に行くのツナ」

 そうオレに問う時の目は、夕暮れの所為で何時もより黒が深く見える。

「ど、どこって、シャ、シャマルを……呼びに……っ」
「シャマルさんならもういないんじゃないかな」
「そ、そんなの分かんないだろう……っ」

 三人が苦しんでいると言うのに、なんにも変わった様子を見せない時。それどころか“笑顔”だなんて表情でいる時に、オレの中にある“違和感”は“確信”に変わった。

「そ、そこどけよ……っ」
「どうして?」
「う、るさいっ、どけよっ!」

 オレが声を荒げた次の瞬間。

「ク……ククク、何故?」

 目の前の時は、いや、“時の姿をした何か”は、その時と同じ口元を大きく吊り上げて、時とは全く違う声質で、八重歯を光らせ、そう言った。

「……お、まえっ、なんだよ……!」

 オレを見て哂う“何か”に言う。

「何? と問われれば、“白井時だ”、としか答え様がない状況だが」
「うるさい! お前は時なんかじゃない! 獄寺君達がが苦しんでるのに時が何もしないもんか! それにお前……っ」

 そう、コイツは違う。
 何かが違うんじゃない、全てが違う。

「んー……? 理解しがたい言葉だな。何を持ってして、違う、と言っているのか実に理解しがたい。もう少し分かり易く話して頂けるかな?」
「黙れよ! お前は時じゃない! 分かるんだ! 分からないけど分かるんだよ! お前は時じゃない! 時であるわけがない! オレが今まで感じてきた時は、お前なんかとは全然違うっ!!」

 そうオレはちゃんと覚えてる。

 映像としての記憶じゃない、目から入ってきた情報じゃない。心が、体が、オレの中にある全ての感覚が、確信が、お前は時じゃない、そう訴える。

「お前は時じゃないっ。お前の言葉なんかでオレは惑わされないっ!」
「………………」

 ――――……ああ、本当に。

「君のその“血筋”は気に入らない」

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