◆ Ⅰ - ⅳ ◆ ⅩⅩⅩ ◆
「おーいツナー。どうしたんだこれー」
今尚、続行されている、殴り合いに、蹴り合いに、ド突き合いに、その他諸々の攻防戦に、どうしたらいいんだよこれ、と呆けていたら後ろから声を掛けられた。
振り向けば眉間を変にしかめている山本。
部活の筈なのになんでいるんだ? なんて首を傾げては見たけど、なるほど、山本の格好と、周りの景色を見れば、自然とその理由が分かった
放課後での山本は、部活の為にその大半が野球のユニフォームを着ている。けど今は並盛中の制服に彼らしい紺のマフラー、そして教科書とかが入っている肩掛け鞄とで、教室で別れる時の、つまりは部活が終わった後の下校時の格好だ。
そして周りの景色。
獄寺君とお兄さんを取り囲んでいる野次馬たちに目を向ければ、みんながみんなもう帰宅の格好だ。空も空で、何時の間にこんなに暗くなってたのか、陽がすっかり落ちて、冬らしい寒そうな空になっていた。
「う、わ、もうこんなに暗くなってたんだ……!」
「何だ気づいてなかったのか?」
「あー、うん、まあ……あれ見てると時間も忘れるって言うかさ……」
「ん? ああ、で? なんだアレ? アレって獄寺と笹川先輩だろ?」
あそこまでのマジゲンカってめずらしいよな?
確かに、山本の言う事はもっともだ。獄寺君とお兄さんは何かにつけて怒鳴り合ってるけど、ここまでの長期戦、しかも殴り合う様な喧嘩はあまり見た事がない。けど今は喧嘩の元が元なので、仕方がない、と言えば仕方がないとは思う。
「えっとさ、その……実はこれ、時の話しててこうなっちゃって」
「…………とき?」
「あ、う……ん」
オレの言葉に反応した山本の表情。
それを見た後に今更ながら、しまった、と思う。
山本は時が風邪で倒れて以来、反動か何かなのか、やたら時の絡む事に過敏になってる。周りで誰かが時の悪口を言ってれば、眉間に皺を寄せてすぐその人に詰め寄るし、相手が男であれば胸倉なんかを掴んで、何時もよりかなり低い声で凄んだりもしてた。
普段温厚な山本がそうなると、何時も切れている獄寺君とは怖さが違うのか、回りのみんなも驚いて、果てはその意外な怖さに顔を青くして、時が居なくなって数日経った今では、山本の前で時の悪口を言おう、なんて勇者は数えるほどしかいない。
そんな今の山本に、二人の喧嘩の原因が“時”である、なんて言ったとして、さて一体それは今の現状をどうする事になるのだろうか?
その答えはこうだ。
「ときが、って…………おい!! お前ら何やってんだよっ!!」
一瞬目を見開いた山本は、そう言うや、取っ組み合っている二人の間へと割って入り喧嘩に参戦。
体育会系二人に加え、イタリアンマフィアの三つ巴抗争。
これがもし、蛇とか、カエルとか、ナメクジとか、よく三つ巴で例えられる、オレよりも体格規模が格段に小さい動物達だったなら、まだどうにか出来たかもしれない。
……蛇は嫌だけど……ああいや、ナメクジもヌメヌメしてて……ああでも、それ言うとカエルもカエルで、ちょっとこう、あんまりお近づきにはなりたくない様な…………ああうん、とりあえず全部嫌だな、うん。
ああ、いやいや、そんな事、今はどうでもいいんだよオレ。
とにかく、今、オレの目の前で、いざ戦わんとしている三人は、悲しいかな、オレよりも図体がデカイ上に、腕力も何もかも、オレとの差は比べるまでもない、宇宙と微生物だ。そんな微生物のオレがどうにか出来る範囲を、この状況は大いに上回っていた。
さあ、ダメツナ沢田綱吉のオレに、この目の前の現状をどうにか出来るものなのか? 一応考えはした、コンマ一秒くらい。こんなに速く何かに対しての答えを弾き出したのは人生で初かもしれない。あ、どうしよう、全然嬉しくない。
「や、山本! ちょっ待っ……っ!」
三対一は正直言って辛い。
しかもその、三、の側がオレと言う存在を軽く飛び越えてしまっている三人だ。ズルイなんてモンじゃない、オレ一人にリボーンを一万人けしかける様なもんだ。
酷い。
酷すぎる。
なのでオレは、せめて山本だけでも、とオレの傍から駆け出した、三人の中で一番何とか出来そうな人物に声をかけた。いや正確には、“かけ様とした”、馬鹿なオレでも分かる、分かり易い過去形だと思う。
『ちょっと待って山本、今ケンカしたって意味ないよ』、と。
けどその言葉はオレの傍から走り去っていった、言葉を投げかける相手であった山本の行動によって遮られた。
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